オリガ・モリソヴナの反語法/米原万里
「オリガ・モリソヴナの反語法 」を読了。
タイトルを見て、この小説を読んでみたいと思う人がどれくらいいるだろうか。
たぶんほとんどの人が、引いてしまうのでは。
それどころかタイトルからは、小説であることさえ分からないかもしれない。
40代の主人公(モデルは明らかに作者の米原万里、本人)が、
少女時代を過ごしたプラハのソビエト学校で知り合った個性的な二人の教師。
二人がスターリン時代をどのように生き抜いてきたのか、
主人公は30年後にロシアを訪れ、関係者に話を聞きながら、その謎を解いていく。
次第に浮かび上がる驚がくの事実、そして想像を絶するロシアの歴史・・・
私は昔からソ連、ロシアの歴史が苦手であった。
地名や名前が覚えられなかった。
そして高校1年の夏、英語の宿題として出されたのが
オーウェンの「ANIMAL FARM」の原作。
これが苦手に拍車を掛け、以降、ロシアの歴史はもとより、
ロシア文学にも関心を持つことはまったく無くなった。
この小説はミステリータッチで描かれているが、謎は1つだけではない。
いくつもの謎が組み合わさっており、読者をどんどん引き込んでいく。
次々に登場する人物の描写も実に巧みで、飽きさせない。
そしてスターリン体制、その粛清の現実など
私が避けていた旧ソ連の歴史を学ぶことが出来た。
前作の「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」は、
作者の実体験をつづった感動的なノンフィクション。
「オリガ・モリソヴナの反語法 」のストーリーも似てはいるが、
明らかにノンフィクションである。
作者は、フィクションで書ききれなかったことを、
今回の作品で読者に訴えたかったのであろう。
国家とは、愛国心とは何かを考えさせられる2冊である。
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