July 10, 2009

少女/湊かなえ

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湊かなえの「告白」に続く第二作「少女」を読んだ。

高校生の桜井由紀と草野敦子が主人公。
幼なじみで、小さいころは一緒に剣道教室に通っていた。
そんな二人だが、由紀の書いた小説が盗作されたことをきっかけに、
次第に離れていく。
そんなとき転入生の紫織が現れ、3人は話をするようになる。
紫織が「死を目撃した」ことを語り、人の死に関心を持つ2人は、
「人が死ぬ瞬間を見たい」と、
夏休みにそれぞれ、病院と老人福祉施設でアルバイトを始める・・・。

二人の少女が交互に語る構成は、
どちらのことなのか、読んでいても分かりづらく、頭が混乱した。
それが狙いなのかとも思ったが、そうでもなさそうだし、
この点は大きな減点。

しかし何でもないエピソードの数々が
綿密に仕掛けられた伏線となっており、
最後にすべて収束するさまは実に見事。

全体の完成度では前作「告白」に及ばない。

★★★★

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July 08, 2009

サイモン&ガーファンクル 名古屋公演

サイモン&ガーファンクルの来日公演を
ナゴヤドームで聴いてきた。
今回の日本ツアーの初日となる公演。

生まれて初めて購入した洋楽のLPが
S&Gの「グレイテスト・ヒッツ」。
中学時代にぼろぼろになるまで聴いた。
その後も10年ほどは、2人のソロアルバムを
ずっと購入し続けていた。
なのに、実はまだ一度も、
このデュオを生で聴いたことがない。
今回はラストツアーとも噂されているので
ぜひ一度、見ておきたいというのが
チケットを手に入れた理由。

正直、あまり期待していなかった。
二人の年齢や、アート・ガーファンクルの麻薬(大麻だったかな)
のことを考えると、
本当に声が出るのだろうか、
2時間歌い切れるのだろうか、
そんな不安ばかりが頭をよぎっていたのだが・・・

さて、コンサートのオープニングは、
スクリーンに流れる2人の生い立ちの映像。
そして旧友、ブックエンドのテーマとおなじみの曲が歌われた。
最初は、アートの声が聴こえない。
不安が的中かと思ったのだが、
7曲目のヘイ・スクールガールあたりから
見違えるように二人の声がハモるようになった。
あとは最後まで心配することなくコンサートを楽しめた。

印象深かったのは、
「ミセス・ロビンソン」と「明日に架ける橋」。
前者では、間奏部分でバディ・ホリーの
「ノット・フェード・アウェイ」が登場したのに驚いた。
後者は圧巻、
大げさでなく、死ぬまでに一度は
生で聴いておきたい曲だよなあ、やっぱり。

ほかにも「シューズにダイアモンド」での
バックバンドのアカペラや演奏は鳥肌が立ったし、
ポールのギター1本でハモった「木の葉は緑」には涙、涙・・・

もし名古屋公演が明日あったら、
当日券で駆けつけたと思う、たぶん。

以下にセットリストを掲載。
ただし、落ちがあるかもしれないのでご了承を。

●サイモン&ガーファンクル 名古屋公演
 '09.7.8 ナゴヤドーム 座席:アリーナBブロック10-85

Set list
1. 旧友
2. ブックエンドのテーマ
3. 冬の散歩道
4. I Am a Rock
5. America
6. キャシーの歌
7. Hey Schoolgirl
8. Be Bop a Lula
9. Scarborough Fair
10.早く家に帰りたい
11.Mrs. Robinson(途中で“Not fade away”)
12.Slip Slidin' Away
13.Bright Eyes(Art)
14.A Heart in New York(Art)
15.Perfect Moment(Art)
16.Now I Lay Me Down To Sleep(Art)
17.The Boy in the Bubble(Paul)
18.シューズにダイアモンド(Paul)
19.時の流れに(Paul)
20.ニューヨークの少年
21.コンドルは飛んでゆく
22.My Little Town
23.明日に架ける橋
(1st アンコール)
24.Sounds of Silence
25.The Boxer
(2nd アンコール)
26.木の葉は緑
27.いとしのセシリア
(バンド紹介)
28.いとしのセシリア (reprise)

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July 07, 2009

怖い絵1・2/中野京子

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中野京子の「怖い絵」「怖い絵2」を続けて読んだ。

“怖い”をテーマにした絵画エッセイ集で、
すこぶる評判がよく、
つい先日も第3巻が発行されたばかり。

西洋絵画は結構見ているつもりだったが、
専門的に学んだわけではないので、
本に紹介されている絵画で、知っていたのは
3分の1くらいだろうか。
名前さえしらない画家も数人いた。
しかしこの本を読むのに、
絵や画家を知っている、知らないは
それほど問題ではない。

最初のページで絵が紹介される。
じっくり見ても、どこが怖いの?と思う絵画もある。
ところが、時代背景や、当時の風俗、習慣などが語られるにつれ、
なるほど、怖く見えてくるのだ。
ある意味、謎解きが味わえる本ではないだろうか。

しかし中世ヨーロッパの王室の
権力争いや血縁に関するエピソードは、
どんな怪談よりも怖い。

Amazonによると、この著者の本は
「名画で読み解くハプスブルク家12の物語」「危険な世界史 」など、
どれも4つ星、5つ星と、大変評価が高い。
ぜひ読んでみようと思う。

★★★★★

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July 04, 2009

完全恋愛/牧薩次

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牧薩次の「完全恋愛」を読んだ。
2009年の“このミス”第3位、第9回本格ミステリ大賞受賞作。
ちなみに「牧薩次」は、作家・辻真先の別名義で、
キャラクターとして本作品にも登場する。

画家・柳楽糺(なぎらただす)の生涯を書いた物語。
彼は疎開先で小仏朋音に出逢い、
一生、彼女を愛し続ける。
そしてその人生の中で三度、大きな事件と関わりを持つ。

駐留軍の将校刺殺事件、
朋音の娘・火菜の遠隔殺人事件、
朋音の夫の溺死事件・・・

前述のとおり一般的な評価は高いけど、実際に読んでみて、
ミステリーとしても、恋愛小説としても、
中途半端だと思う。

どの事件のトリックも、無理をしてると感じる。
まあ、ミステリーというのはそういうものと
割り切ってしまえば、楽しめるのかもしれない。

時期は違うが、同じように昭和の時代を描いた
「オリンピックの身代金/奥田英朗」を読んだばかりなので、
その情景描写にも薄っぺらさを感じた。

ただ最後の最後、
タイトル「完全恋愛」にふさわしいオチがついている。
これは予想外、鮮やかなラストだった。
そうか、完全恋愛を成し遂げたのは、この人だったんだ・・・納得。

★★★

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July 02, 2009

ディア・ドクター(西川美和監督)

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西川美和監督の「ディア・ドクター」を公開初日に見てきた。

へき地の村で、診療所の医師・伊野(笑福亭鶴瓶)が
失踪した場面から映画が始まる。
刑事は、伊野の足取りを求めて、
看護師の大竹(余貴美子)など関係者や村人らに事情聴取をする。
そんななかで、次第に伊野の正体が明らかになってくる。
映画は回想しながら、伊野の人生を浮き彫りにしていく・・・

脚本から演出までを手掛ける西川監督。
前作の「ゆれる」同様、奥深い人間描写に感心した。
鶴瓶や余をはじめ、瑛太、香川照之、井川遥、八千草薫、
登場人物は多くないが、
それぞれに個性的で、これ以上ないというくらい
見事な演技を見せてくれた。

賛否が分かれるラストが素晴らしい(とワタシは思う)。
映画は早々にネタばれとなるので、
監督は、この作品をどのように締めくくるのかが、
一番気になっていた。
それがあのラスト。
見落としそうになるくらい、短いシーン。
「そうきたか、やられたっ」
お見事。

昨日、今年度上半期の直木賞候補作が発表された。
西川美和監督の小説「きのうの神さま」も選ばれている。
多才な人である。

★★★★★


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July 01, 2009

オリンピックの身代金/奥田英朗

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奥田英朗の「オリンピックの身代金」を読んだ。

昭和39年の東京が舞台。
アジア初のオリンピックを2カ月後に控えた8月、
その警備の最高責任者である須賀修二郎宅と警察学校の寮が
立て続けに爆破される。
やがて爆弾魔・草加次郎の名を語る犯人から脅迫状が届く。
オリンピックの中止を要求する内容であった。
警察はかん口令を敷き、爆発の事実も脅迫状も国民に伏せた。
国家の威信を掛けた東京オリンピック、
万が一のことで国際的な評価を落とすわけにはいかない。

主人公である東大の院生、島崎国男は、
兄が働いていたオリンピック会場の建設現場で
肉体労働をすることにした。
華やかなオリンピックの陰で、
多くの人が苦労を強いられていることに
次第に義憤を感じる。
オリンピック開催を阻止することに決めた国男は、
計画を練り、国や警察と対峙することになる・・・。

昭和の時代を舞台にした犯罪小説。
ノンフィクションであるにもかかわらず、
この事件、もしかしたら現実に起きていたのでは、
というリアリティを感じさせる筆力は見事。

犯人である東大院生、肉体労働の人夫、
警察庁の幹部、公安部や刑事部の警察官、
ヤクザ、そしてその他大勢の一般市民など、
さまざまな人物が登場し、
昭和という時代、戦後19年しかたっていないという時代の雰囲気、
変貌を遂げる都市・東京を見事に描いている。

2段組、500ページを超える厚みを
まったく感じさせない傑作。
これからも奥田英朗からは目が離せない。

★★★★★

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June 28, 2009

シェルブールの雨傘(ジャック・ドゥミ監督)

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ジャック・ドゥミ監督の「シェルブールの雨傘」を見てきた。
製作45周年を記念した“デジタルリマスター版”での上映。
この作品を映画館で見るのは4回目。
前回は13、4年前、
たしか渋谷宮益坂のイメージフォーラムで。

舞台はフランスのシェルブール。
傘店の娘ジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と
自動車整備工のギイ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)は恋人同士で
結婚も考えていた。
兵役でギイに召集令状が届き、
彼は2年間、アルジェリア戦争に出征することに。
直後にジュヌヴィエーヴの妊娠ががわかる。
子どもが生まれるのを楽しみにしていたのだが、
若い二人に2年間は余りに長かった・・・

すべてのセリフに曲が付けられ、
語りの部分が一切無いミュージカル。
ストーリーはシンプルで、
ミシェル・ルグランの見事な音楽とともに、
実に味わい深い作品となっている。
ドヌーヴの初々しさも忘れられない。

全編、名場面の連続だが、特に印象的なのがラストシーン。
ガソリンスタンドの中でジェヌヴィエーヴが
車内に残っている女の子を見ながらつぶやく。
「あなたにとてもよくにている」「会う?」
ギイはゆっくりと首を横に振る。
そして「君はもう行った方がいい」
ジェヌヴィエーヴが去り、妻とわが子が戻ってくる。
カメラは引き、物語は終了する。
降りしきる雪が二人の過去をすべて包み込んでいく・・・(涙)

★★★★★

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June 23, 2009

モダンタイムス/伊坂幸太郎

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伊坂幸太郎の「モダンタイムス」を読んだ。

SE(システムエンジニア)の渡辺は、
ある日突然、殺し屋に襲われ
あやうく命を落としそうになる。
それから彼の周りでは、ひどい事件・事故に遭う人が相次ぐ。
どうやら、ある言葉の組み合わせをパソコンで検索すると、
被害に遭うことが分かってきた・・・

週刊モーニングで連載されたという変わり種の小説。
あとがきで
「全力疾走した短いお話を五十六個積み重ねたかのような」
との表現もあるくらい、
休む間もなく、話が展開していく。

タイトルの「モダンタイムス」は、
チャップリンの傑作映画から取っている。
システム化された近代社会の中では、
労働者は歯車になってしまうという風刺映画。
この小説には、何度もシステムという言葉が登場。
検索した人をひどい目に遭わせていたのは、
悪人や組織ではなく
"資本主義国家"のシステムであったというのは、
まさに、チャップリンの世界と重なる。

殺し屋、岡本猛や作家、井坂好太郎など、
いつものように個性的な人物がずらりと登場する。
なかでも奥さんの佳代子は、
歴代、伊坂ワールドでも最高、そしてたぶん最強。
こういう女性にしびれるワタシはM嗜好あり?

そして、最後にわかる超能力がアレとは(笑)
このあたりのセンスは、この作家らしい。

★★★★☆

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June 21, 2009

ガマの油(役所広司監督)

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役所広司の初監督作品「ガマの油」を見てきた。

デイトレーダーとして毎日、億単位の金を動かす拓郎(役所広司)は、
息子の拓也(瑛太)と妻・輝美(小林聡美)の3人で
田園調布の宮殿のような大豪邸に住んでいた。
ある日、親友・秋葉(澤屋敷純一)を迎えに行った拓也は、
途中で交通事故に遭う。
意識不明となった拓也の携帯電話に、
ガールフレンドの光(二階堂ふみ)から電話が掛かり
拓也になりすまして出てしまう拓郎だが・・・

う〜ん、期待していたんだけど、
結果的には大ハズレ。
役者はそろっている。
しかい、監督を兼ねた役所広司に、小林聡美、
瑛太、澤屋敷純一、二階堂ふみ、
さらには特別出演の八千草薫、
だれひとりとして魅力を引き出せていない。

寒い、イタいシーンの連続、しかも長い、
何度、席を立とうと思ったことか。
熊の場面、あれで笑えって言うのかよ〜、役所監督。
そしてラストの仏壇、

げっ、丹波哲郎の『大霊界』!

驚きを超え怒りさえ感じた。

最後まで中身の無いひどい映画。
星はひとつも付けたくないけど、
付け忘れたかと思われるので、いちおう半星を。
実質は0評価。

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June 18, 2009

男と点と線/山崎ナオコーラ

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山崎ナオコーラの「男と点と線」を読んだ。
世界各地を舞台にした男と女の物語が、
軽いタッチで描かれている短編集。

特別にぐっとくるような感動作はないし、
どこにでもありそうな、いわば、とりとめもない話ばかり。
6つの短編は関連性がなく、
ひとつひとつが淡々と終わっていく。

特にファンタジーっぽく描かれた「邂逅」と、
高校生のデートを中心とした「膨張する話」は、
私には相性が合わなかったようだ。
ほかの作品にも、アンバランスで不思議な感覚の文節があるが、
私には稚拙としか読み取れなかった。

芥川賞候補作の「カツラ美容室別室」を読んだときの感想が、
「特に感じるものはなかった」
今回もまったく同じ。
当分、この作家の作品を手に取ることはないと思う。

★★

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